最近は狭い面積でも住宅内を広くしようと、廊下をなくす家が増えています。確かに廊下は移動するだけのスペース、廊下がないほうがリビング全体も広くなるでしょう。

しかし近年、その廊下の良さを見直す動きが増えています。とくに田舎のおばあちゃんの家にあるような長い廊下は、人の心を落ち着かせてくれます。また、廊下があることで多目的に使えるスペースが増え、プライバシーの確保にも役立つのです。今回は、家に長い廊下を作るメリットやポイントについて紹介します。

1. 長い廊下は邪魔なだけ?

大家族で住んでいた昭和の時代、特に広い家には長い廊下があるのが一般的でした。年末の大掃除には、廊下に雑巾がけをした人もいるでしょう。

しかし近年の住宅においては、廊下を一切作らないケースも増えています。まずは家に廊下があることのデメリットについて見ていきましょう。

1-1.廊下があるデメリットとは

  • 廊下がある分、部屋の面積が狭まる
  • 部屋と部屋の間に廊下があると移動しにくい
  • 廊下があることで玄関周辺はとくに寒くなる
  • 廊下がある分、無駄に家全体が広くなるケースも

すべての家に当てはまるわけではないのですが、廊下があると上記のようなデメリットも生じます。とくに都会の場合は狭小住宅も多く、廊下のスペースを作ることで部屋が狭くなってしまいます。

また、広い家の場合も廊下の面積が大きいことで無駄に広がり、掃除が大変、収納場所がまとまらないといったデメリットもあるのです。

1-2.実は廊下の良さも見直されている

しかし、最近では次のような理由から廊下の良さも見直されています。

  • 廊下があることで、各部屋が独立した空間となり、部屋の防音対策になる。
  • 廊下の存在が建物の空気循環を促し、湿気やカビの発生を防いでくれる。
  • 廊下に窓を設置することで、日光や自然の風を取り入れることができ、部屋全体の明るさや換気にも役立つ。
  • 廊下に収納スペースを設けることで、収納スペースを効率的に使うことができる。
  • 廊下は家族が出入りする場所でもあるため、家族のコミュニケーションの場として活用できる。

これから家を建てるのなら、これらのメリットを考慮して長い廊下を設置してみてはどうでしょうか?ではさっそく、廊下があることで得られるメリットや特徴について見ていきましょう。

2.長い廊下はこんな役割がある

昔の長屋や平屋には、長い廊下があるのが一般的でした。単に部屋の移動スペースではなく、多くのメリットがあったのです。また、現在多くの家にある一般的な廊下も、次に紹介するメリットは当てはまります。家づくりにおいて今後廊下を作ろうか迷っている人は、ぜひ参考にしてください。

2-1.南側に廊下があればできることはたくさん!

南側に廊下があると、日が差し込むことから次のようなスペースになります。

  • 植物を育てる
  • 布団や洗濯物を干すスペースになる
  • 日向ぼっこや子供が遊ぶ場所に
  • ペットのハウススペースにも

南側に廊下があると日当たりが良くなり、室内に光が入りやすくなるため、植物を置いたり、過ごしやすい空間になったりします。

とくに植物が好きな人にとって南側の廊下は、ちょっとしたガーデンスペースになるでしょう。屋根や壁面がガラス張りになっているコンサバトリーという空間も、長い廊下で代用できます。南側の廊下は日当たりが良く明るいスペースなので、趣味のものを飾る場所としてもおすすめです。

2-2.夏は涼しく、冬は温かい

廊下があると、家の中が夏は涼しく、冬は温かくなります。これはとくに南側に長い廊下があることで作用します。

夏場は南側にある廊下が、夏の日差しが直接部屋に入るのを防いでくれます。また、廊下に窓があれば太陽光によって温められた熱を外に出すこともできるでしょう。廊下に換気をもたらすことで気流が建物内の空気を循環させ、室内の熱気を外に逃がして涼しい空間を維持できます。

そして冬場は直射日光が南側の廊下に当たります。暖かい空気が床から室内に昇り、室内の温度を上昇させて室内の温度が上昇し、暖かい空間ができるのです。

このように、南側にある廊下は、夏は涼しく、冬は温かい空気が流れやすくなるため、省エネ効果が期待できます。

2-3.外からの家の中が見えにくくなる

廊下があることで外から家の中が見えにくくなるため、プライバシーが守られます。また、廊下に窓を設置することで、室内と外の両方から光を取り入れることができます。

住宅街など、外から家の中が見えやすい場所に住む場合、プライバシーを守るためにカーテンやブラインドを閉める必要があるでしょう。しかし廊下があれば、外から部屋までワンクッションのスペースがあるため家の中は見えにくいです。廊下があることで、カーテンやブラインドを閉めずに明るく過ごせることもあります。また、廊下に窓があれば、室内に自然な光を取り入れることも可能です。これにより、室内の明るさを確保することができます。

2-4.騒音を防止する

廊下があれば各部屋から漏れる騒音の予防にもなります。

まず廊下がない場合、各部屋が直接つながっているか、1枚のドアしか隔てるものがありません。そのため、部屋で発生する音がそのまま他の部屋にも伝わります。例えば、子供が部屋で遊んだり、テレビを大音量で見たりする場合、その音が他の部屋にも聞こえやすくなるでしょう。

しかし、廊下があれば、廊下と各部屋のドアの間に一定の距離が生まれ、その距離で音が吸収されます。これにより部屋で発生する音が直接他の部屋に伝わりにくくなります。さらに廊下に遮音材を使用すれば、より効果的に騒音を防止することができるでしょう。

3. 家に廊下を作ったほうが良いケースとは

これから家を建てる、引っ越し先で廊下のある間取りとそうでない間取りで悩んでいるといった人は、次のケースに当てはまるか考えてみましょう。廊下があるかどうかは、家の設計において非常に重要な要素の1つです。以下に、家に廊下を作ったほうが良いケースについて詳しく解説します。

3-1.面積に余裕がある家

家を建てるにあたり、面積に余裕がある場合は廊下を設置したほうが良いでしょう。面積の広い家はリビング以外、部屋同士の距離が離れるケースが多いです。あえて長い廊下を作ることで各部屋にスムーズに移動することができます。また、部屋の配置によっては廊下を通らないと、別の部屋に行けない場合もあるでしょう。間取りによっては廊下を作ることで、生活の利便性を高めることができます。

また廊下があることで、家の中のデザインやインテリアのアレンジもしやすくなります。例えば、廊下には家族の写真やアート作品を飾ることで、家族の思い出やオリジナリティを表現できます。廊下を照明で明るくしたり、色や素材を変えたりすることで、家全体の雰囲気を変えることもできるでしょう。

3-2.家族の生活リズムが違う家

家族の生活リズムが違う家には、廊下があったほうが様々なメリットがあります。

例えば、夜勤のある家族がいる場合、廊下があるほうが他の部屋の音が響かず、昼間でも就寝しやすいです。反対に廊下のない一体化したリビングだと、隔てるものが何もないためゆっくり休むのは難しいでしょう。また、朝や夜などに出入りが頻繁にある場合は、廊下があったほうが寝ている家族も起こさず、移動がスムーズになります。

また、家族の生活リズムが異なる場合、部屋での集中や作業が必要な場合があります。そのような場合、廊下があることで、家族が他の部屋で作業に集中しやすくなります。廊下の存在は光と音を遮断してくれるのでプライバシーも確保され、各自のライフスタイルをサポートしてくれるでしょう。

3-3.物が多い家

家に物が多いと、部屋の中の収納スペースだけでは不足します。廊下を作ることで、収納スペースを増やすことができるでしょう。とくに広い廊下には、壁に棚を取り付けることができるため、季節用品や日用品などを収納できます。また、クローゼットスペースがない場合にも、廊下に簡易的なクローゼットを置いたり突っ張り棒を設置したりすることで、洋服の収納も可能です。

また、物が多い家では、部屋に物を置くことで圧迫感が生じ、家全体が狭く感じます。しかし廊下に物を保管すれば部屋の広さを確保することができ、家全体を広く感じることができます。また、物が多いと探し物がなかなか見つからないことがありますが、廊下に棚を置くことで、物の管理もしやすくなるでしょう。

4.廊下の存在を見直し、生活しやすい間取りにしよう

最近では住宅の間取りにおいて、廊下は邪魔なものとされることが多いですが、廊下には多くの利点があります。

近年、人々の暮らし方やライフスタイルが多様化し、間取りに対するニーズも変化しています。家族構成や生活リズム、収納スペースなどを考慮した上で、廊下を間取りに取り入れることも検討してみましょう。廊下は単なる通路ではなく、生活の中で重要な役割を担っていることを再確認し、間取りを見直すことも大切です。あえて廊下を作ることで、より快適で使い勝手の良い住宅を手に入れることができます。