近年記録的な猛暑が続き、エアコンなしでは過ごせない期間が長くなっています。
特に、都市部におけるヒートアイランド現象も相まって、夜間でも気温が下がりにくく、エアコンの稼働時間は伸びる一方です。その状況で「電気代が高くなる」「エアコンの寿命が短くなるのでは?」といった悩みを抱えている方も少なくありません。
快適さと経済性、そして家電の寿命という要素をどのように両立させるか、そのポイントは「除湿器」を使うことです。
まずはエアコンの寿命や故障の原因などについて見ていきましょう。
1.フル稼働はエアコンの寿命を縮める?
エアコンの寿命は、一般的に10年から15年程度と言われています。しかし、猛暑日が続く中でエアコンがフル稼働していると、「本当にこんなに使い続けて大丈夫なの?」と不安になる人もいるでしょう。
結論から言うと、エアコンは設計段階から連続運転を想定されており、適切にメンテナンスされていれば、フル稼働で寿命が縮まることは少ないです。
ただし、内部の部品にはモーターやコンプレッサーといった消耗品があり、これらが長時間高負荷で運転することで劣化が早まる可能性はゼロではありません。
特に、フィルターの目詰まりや室外機周辺の障害物など、エアコンに余計な負荷がかかると、部品の劣化を加速させ、寿命を縮めるケースもあります。故障のリスクを低減し、長くエアコンを使うには、日頃からエアコンの適切なケアが重要です。
2.意外と知らない?エアコン故障のリスク
エアコンの故障は、突然やってくることも少なくありません。特に夏の暑い時期に故障するケースも多く、熱中症のリスクも高まります。
エアコンの代表的な故障原因としては、冷媒ガス漏れ、コンプレッサーの不具合、そして電気系統のトラブルなどが挙げられます。
これらの故障は、適切なメンテナンスを怠っていたり、無理な運転を続けていたりすることで発生しやすいです。
例えば、フィルターが目詰まりしている状態で運転を続けると内部に負荷がかかり、コンプレッサーに不具合が生じることもあります。
また、室外機のフィンが汚れていたり、周囲に物が置かれていたりすると、放熱がうまくできず、オーバーヒートの原因にもなります。エアコンの故障を防ぐには、定期的なお手入れと、異常を感じたらすぐに専門業者に相談することが大切です。
3.エアコンの負担を減らす!「除湿器」の賢い活用法
紹介している通り、エアコンは真夏の時期に突然壊れることも少なくありません。
そうしたトラブルを防ぐには、湿度をコントロールする「除湿器」との併用もポイントです。
3-1.蒸し暑さの正体は「湿度」にあった!
日本の夏の不快な蒸し暑さは、気温だけでな湿度が大きく関係しています。湿度が高いと、体感温度も上昇し、より不快に感じやすくなります。
3-2.湿度を下げて快適さアップ!除湿器の役割
日本の夏の不快な「蒸し暑さ」は、単に気温が高いだけではありません。その真の正体は、空気中に含まれる水分量(湿度)の高さにあります。
気温が同じでも、湿度が低いサラッとした空気と、湿度が高いジメジメとした空気では、体感温度が大きく異なります。これは、人間の体温調節機能が関係しています。
私たちは汗をかくことで体温を下げますが、湿度が高いと汗が蒸発しにくくなり、体からの放熱が妨げられてしまいます。そのため、たとえエアコンで室温を下げても、湿度が高いままだと不快に感じ、「もっと設定温度を下げたい」と思ってしまいがちです。
この悪循環が、エアコンの過度な使用や電気代の上昇に繋がってしまいます。
4.エアコンを休ませる?除湿器との併用メリット
そこで活躍するのが除湿器です。除湿器は室内の空気から水分を取り除ける家電であり、室内の湿度を下げることで、体感温度を効果的に下げられます。
例えば室温が28℃でも湿度が70%あると蒸し暑く感じますが、除湿器で湿度を50%程度まで下げられれば、同じ28℃でも格段に快適に感じられます。これは、湿度を下げることで汗の蒸発が促進され、体からの放熱がスムーズに行われるようになるためです。
除湿器を使うことで、エアコンの設定温度を必要以上に下げることなく、快適な室内環境を維持できるため、電気代の節約にも繋がります。
5.除湿器の種類と選び方:あなたのライフスタイルに合うのは?
節電や、エアコンの寿命を高めるためにもぜひ併用してほしい除湿器。
除湿機には主に以下の3種類があります。
- デシカント式
- コンプレッサー式
- ハイブリッド式
ここからはそれぞれの除湿器の特徴や、暑い夏に向いている除湿器はどれなのかを紹介します。
5-1.デシカント式除湿器の特徴とメリット・デメリット
デシカント式除湿器は、内部の乾燥剤(デシカント素子)が空気中の水分を吸着し、ヒーターで温めて水分を蒸発させることで除湿を行います。
特徴
・低温環境に強い
・軽量・コンパクト
・運転音が静か
メリット
・冬場の結露や部屋干しでもしっかり除湿できる
・コンプレッサーがないため、本体が軽い
・コンプレッサー式と比べて、運転音が比較的静か
デメリット
・ヒーターを使うため、電気代が高め
・夏場は室温が少し上がることもありうる
・真夏の使用には向いていない
デシカント式除湿器は、使うと室温が上昇するので冬場の使用に向いています。1台あれば便利ですが、真夏の使用にはあまり向いていません。
5-2.コンプレッサー式除湿器の特徴とメリット・デメリット
コンプレッサー式除湿器は、エアコンと同じ原理です。空気中の水分を冷やして結露させ、水滴として回収することで除湿を行います。
特徴
・高温多湿な環境に強い
・電気代が安い 室温上昇が少ない
メリット
・梅雨から夏にかけて高い除湿能力がある
・ヒーターを使わないため、デシカント式よりも電気代を抑えられる
・除湿しても室温が上がりにくい
デメリット
・低温の冬場では除湿能力が落ちてしまう
・本体が大きく重い
・コンプレッサーの運転音が気になる場合がある
コンプレッサー式の除湿器なら、梅雨から夏にかけて高い除湿能力を発揮します。高温多湿な環境で最も効率良く除湿できるので、夏場にエアコンを併用したいならコンプレッサー式の除湿器がおすすめです。
5-3.ハイブリッド式除湿器の特徴とメリット・デメリット
ハイブリッド式除湿器は、デシカント式とコンプレッサー式の両方の機能を兼ね備えたタイプです。季節や室温に応じて、自動で最適な除湿方式に切り替わります。
特徴
・オールシーズン対応
・電気代を効率化できる
メリット
・季節や室温に合わせて除湿方式が自動で切り替わる
・一年中安定した除湿能力を発揮できる
デメリット
・本体価格が高め
・サイズも大きく重い傾向がある
ハイブリット式の除湿器は、夏場はコンプレッサー式、冬場はデシカント式と自動で切り替わります。これにより年間を通して安定した除湿能力を発揮します。
ただし両方の部品を内蔵しているため、どうしてもサイズが大きく、重くなります。それでも「一台で一年中快適に除湿したい」という方にはおすすめです。
6.エアコンと除湿器、効果的な併用術
エアコンと除湿器の両方を使うことで、夏はより快適に、ランニングコストも抑えて過ごせます。次に紹介する状況に応じた使い分けがおすすめです。
6-1.シーン別!おすすめの組み合わせ方
シーン | エアコンの設定 | 除湿器の設定 |
---|---|---|
帰宅直後、室温が高い時 | 冷房(強め) | 停止または併用(短時間) |
室温が落ち着いた後、蒸し暑い時 | 送風または弱冷房(設定温度28℃目安) | 運転(湿度50~60%目安) |
梅雨時期や雨の日(室温が低いが湿度が高い) | 送風または停止 | 運転(湿度50~60%目安) |
就寝時 | 弱冷房または送風(タイマー設定)(設定温度28℃目安) | 弱運転(湿度50~60%目安) |
外出時 | 停止 | 運転(留守番機能など) |
室内の広さ、間取り、窓の配置、日当たりなどによって最適な方法は異なります。ご自身のライフスタイルや体感に合わせて、柔軟に調整することが大切です。
6-2.上手な「除湿」で電気代を賢く節約
エアコンと除湿器を併用することで、電気代を賢く節約することが可能です。電気代の大部分を占めるのはエアコンの冷房運転、特にコンプレッサーの稼働時間です。除湿器を上手に使うことで、このコンプレッサーの稼働時間を減らすことができます。
【具体的な節約術】
・「除湿」は除湿器に任せる
・湿度を基準に考える
・扇風機やサーキュレーターも併用するとさらに効率的
・外出時はエアコンより除湿器を使用する
湿度が高いと感じる時は、エアコンの冷房設定温度を少し上げ、代わりに除湿器を稼働させるのがおすすめです。効率的に湿度を下げ、エアコンの冷房負荷を軽減できます。
7.エアコン故障を防ぐ!長持ちさせるための使い方
エアコンを効果的に使うには除湿器との併用がおすすめです。それでもエアコンの使い方を誤るとすぐ故障につながるため、次に紹介するポイントを覚えておきましょう。
7-1.フィルター清掃の重要性
エアコンを長持ちさせるには、フィルターの定期的な清掃が欠かせません。フィルターがホコリで目詰まりすると、エアコンの効率が落ち、余計な電力を消費します。さらに内部部品に大きな負担がかかり、故障の原因になります。
一般的には2週間に一度の頻度で、掃除機でホコリを吸い取るか、ひどい汚れは水洗いをしましょう。この簡単な手入れでエアコンの性能を保ち、電気代を節約できます。フィルターをこまめに掃除するだけで、結果的にエアコンの寿命を大きく延ばせます。
7-2.室外機の設置場所とメンテナンス
エアコンの性能を最大限に引き出して長持ちさせるには、室外機の状態も重要です。室外機は室内の熱を排出する役割があるため、周囲の空気の流れが悪いと、エアコンに余計な負担がかかってしまいます。
直射日光を避ける | 夏場は日よけを設置し、本体温度の上昇を防ぎましょう |
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風通しを確保する | 周囲に物を置かず、最低10cm以上のスペースを空けて空気の流れを妨げないようにしましょう |
定期的な清掃 | フィン(熱交換器)にホコリや落ち葉が詰まると効率が落ちるため、定期的に掃除しましょう |
これらの簡単なメンテナンスで、室外機が効率的に機能し、エアコン全体の負担が減り、故障リスクの低減と寿命の延長に繋がります。
7-3.設定温度の見直しと適切な運転モード
エアコンを長持ちさせるには、設定温度の見直しと適切な運転モードの選択が重要です。冷やしすぎはエアコンに大きな負担をかけます。
自動運転 | 室温と湿度を感知し、エアコンに最適な運転モードと風量を自動で選んでくれます |
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送風 | 室温が高くないが湿度が高い時や、除湿器を使う際に利用しましょう。冷媒を使わないので電気代も安く、エアコンの負担も軽くなります |
「弱冷房」や「ドライ(除湿)」 | 「ドライ」には室温が下がる「弱冷房除湿」と、室温を保つ「再熱除湿」があります。除湿器を併用する際は、エアコンのドライモードを控え、除湿器に任せることで、電気代とエアコンの負担を抑えられます |
これらの工夫により、エアコンへの負担を軽減し、電気代も節約しながら、より快適な室内環境を維持することが可能です。
8.快適な夏を過ごすための新常識
猛暑が続く現代、エアコンは必須ですが、フル稼働は電気代と故障のリスクを高めます。そこで新常識となるのが、エアコンと除湿器の賢い併用です。
除湿器で湿度を下げれば、体感温度が下がり、エアコンの設定温度を上げたり運転時間を短縮したりできます。これにより、エアコンの負担が減り、寿命が延び、電気代も節約できます。さらに、除湿器は梅雨時の洗濯物乾燥やカビ対策にも有効です。
エアコンの正しい使い方は、フィルター清掃、室外機周辺の整備、適切な運転モード(自動・送風など)の選択も重要です。これらの工夫で、快適かつエコな夏を過ごしましょう。